PROJECTプロジェクト紹介

スリランカ国道主要橋梁建設
スリランカの発展に欠かせない
意義あるインフラ整備

発注者高度教育、高速道路省 道路開発庁
建設場所スリランカ民主社会主義共和国 南部州 ゴール~ウェリガマ~マータラ地域
工期2015年3月~2017年4月(25ヵ月)

概要

日本の優れた技術と経験を活かして本格的に取り組むスリランカの「国道主要橋梁建設事業」は、日本との円借款(ODA/有償資金協力)で進められ、スリランカの発展に欠かせない意義あるインフラ整備です。

工事内容

スリランカでは、道路輸送は同国の経済社会活動に極めて大きな役割を果たしています。一方、国道上の主要橋梁は老朽化が進み、架け替え・新規架橋が必要とされていますが、特に建設に高度な技術が必要となる橋長30メートル以上の橋梁については十分な施工技術がないことなどから整備が進んでおらず、幅員不足、超過負荷といった問題が同国の円滑な道路輸送を阻害しています。そこで今回、日本の優れた橋梁技術を適用した橋梁の架け替え、新規架橋の支援がスタートしました。これにより、道路輸送の円滑化を図り、同国の経済成長の促進に寄与します(JICA HPより抜粋)。上記対象37橋梁のうち、10橋梁の架け替え工事を行います。
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背景 スリランカでは近年著しい経済成長期を迎え、引き続き各種産業の成長が期待されています。一方で、経済基盤に欠かせないインフラの整備事業が急務となっています。特に交通インフラのなかでもボトルネックとなるのが道路整備上欠かせない老朽化した橋梁の架け替えや新規架橋の建設です。水害などの防災対策の上からも強く求められています。
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鈴木所長
鈴木所長

リゾート地の河川に
同時に10の橋を架ける

スリランカ国内には整備の対象となる橋梁が37橋あり、北部、コロンボ周辺、コロンボのやや南部、そして南部のエリアに分かれています。そのうちの南部エリアの10橋が、現在携わっている「Package-1」です。これだけの数の橋梁を同時施工することは、当社においてもこれまで無かったと思います。

橋梁の立地概要は以下になります。1)海岸沿いには、A2ロード(ゴールロード)があり、リゾート地になっています。このA2ロードに架けるのはB01、B02、B03、B04、B06Nです。片側2車線、上下4車線の橋梁です。2)ポルワッタガンガ-(Polwatta Ganga)に架けるのはB05、B07、B09です。スリランカでは大きな川「大河」を「ガンガー」と言います。3)内陸部にB08、B10があります。2)、3)、はいずれも片側1車線、上下2車線の橋梁になります。特にB10橋梁は、スリランカ国初の鋼製箱桁橋梁になります。

2016年7月末時点で進捗率60%の計画に対し、現在50%と10%程度計画から遅れています。原因はいろいろあります。一つは用地収容が終わっていない場所があること。また、既存の橋に設置されている電気や水道、通信のユーティリティー関係の撤去が済んでいないところがあります。特に、A2ロ-ドはユーティリティーが多く、工程遅延の要因になっています。全てのユ-ティリティ-の撤去移設は、われわれ契約者の責任となっていますが、水道、電気、通信関係を管轄している日本の中央省庁に相当する機関との調整がつかず、手間取ることが多々ある状況です。
B01
B03
B04
B05
B06N
B07
B08
B09
B10

スリランカで一番の生コンを
自分たちの手で製作

他にも仕事を進める上で大変なことがあります。まずはじめの問題は生コンです。地元3社に我々の希望するスペックを伝え、4ヵ月くらいをかけて配合試験によるトライアルを繰り返しましたが、結局できず、結果的に自社プラントを建設することにしました。機材、機械、運搬車両はインド、スリランカ国内より調達し、また骨材も調合を繰り返し最適な品質の材料を選定しました。生コン製品は大きく分けて、場所打ち杭用、下部工用、PC桁用です。特に下部工はほとんどがマスコンクリートで、打設時の温度、打設後の内部発生温度などの規制があり、モックアップ試験によるトライアルを繰り返し、配合を決定しました。マスコン全てに温度計測管理を行い、クラックの発生を防止しています。PC桁は製作サイクルに合わせた短期間での強度発現を求められますし、場所打ち杭は打設時の流動性を求められます。距離的な時間問題による、打設完了までのワーカビリティーの確保もあります。

このように、それぞれの条件に合わせた最適な製品を供給することがプラントに求められます。プラントが稼働してほぼ1年、今ではローカルのエンジニアの元、ローカルスタッフの手により供給が行われています。

スリランカの人たちは、概ね好意的で工事に反対する人たちもいません。工事を始めた頃は、エンジニアとの立ち会いの際、モリのような物を持ってきて威嚇されたことはありますが、総じて今は好意的です。作業上の安全意識については当初の印象とは違い、スリランカのローカルゼネコンの現場では素足、スリッパ、ノーヘルが見受けられますが、当社の現場ではヘルメット、安全靴、チョッキは必ず着用させています。
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最も重要なコミュニケーション

非常に難しいのが、事務所内の日本人、現地スタッフも含めて職場の雰囲気づくりやコミュニケーションです。各担当サイトに通勤するため朝6時頃事務所を出る職員もいますので、朝は個別の打合せ、夜は19時半より当社職員全員出席の会議を行います。寝泊まりは同じ宿舎なので、夕食だけはほぼ全員そろっていただきます。この時が、仕事抜きの唯一のコミュニケーションの場です。

また各サイトにはローカルエンジニアがおり、各担当職員と打合せを行いながら施工を進めています。メイン事務所にはローカルの各マネージャーがおり作業分担をしています。各サイトからの要求事項をいち早く伝え、それに答えるためコミュニケーションは重要です。

コミュニケーションを円滑に図るために活躍しているのが、当社職員のワルナです。スリランカ人のワルナは、スリランカの国立大学(ペラデニア大学)にて土木を学びました。その大学の先生は日本の愛媛大学で学んだ経験があり、その関係から紹介状を書いてもらい、彼は愛媛大学大学院で橋梁の構造計算についての研究をしていました。その後、博士課程に進む道もありましたが、本人は現場で仕事がしたいと、スリランカで建設会社に就職することを希望しました。そのような折、愛媛大学で共同研究をしていた先生に卒業後の希望を話すと、その先生から「日本の会社で経験を積んでから、スリランカに帰国し、学んだ知識・経験を母国で発揮したほうが良い」とアドバイスをされ、そこでスリランカでODAの工事に携わっている当社を紹介され入社しました。

最後に、当社はスリランカで30年以上インフラ整備事業にかかわっています。この国のインフラはまだまだ未整備で日本の技術力を必要としています。今後もスリランカでのインフラ整備事業にかかわる姿勢が必要かと思います。また、社内でも海外でインフラ整備事業にかかわっていくことが重要課題になっています。今回この有償案件の事業に従事し感じていることは、発注者、エンジニア、ローカルとの円滑なコミュニケーションをいかに取れるか、契約内容を理解し、スペックを理解していかに業務を行えるかということです。各自の経験を生かした施工をするためにも、多くの場でコミュニケーションが必要になります。これは営業そのものです。これからは海外での業務が多くなると思います。一朝一夕にはいきませんが「読み、書き、話す」の英語力を身につけることが必要です。
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PROJECTプロジェクト紹介

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掲載情報は2017年4月現在のものです。