PROJECTプロジェクト紹介

那覇空港滑走路増設工事
沖縄の発展を担う最前線プロジェクト
那覇空港滑走路増設事業

【 空港の規模と主な施設 】
●埋立て面積:約160ha
●滑走路延長2,700m×幅60m
●誘導路延長6,245m×幅30m~〜34m
●無線施設および進入灯など
【 工事計画 】
●空港の南、北の深場はケーソン式護岸
●浅海域は傾斜式護岸
●埋立土量は約1,000万m³
吉瀬次長
吉瀬次長

新滑走路増設事業が急務

那覇空港は、沖縄の玄関口として国内外各地を結ぶ拠点空港であり、さらに沖縄県内離島と沖縄本島を結ぶ地域ハブ空港として重要な役割を果たしています。沖縄県の主要な産業である観光産業は元より、生活物資の輸送や県産農水産物の出荷など、その利用は年々高まっており、県民の生活や経済活動を支える重要なライフラインとなっています。また、LCCの就航などにより観光客を中心にした旅客便が年々増加し、空港の年間発着回数も15万回に達しています。そのような状況を踏まえ、新滑走路整備が急務となっていました。

那覇空港新滑走路の整備は、総事業費約2,000億円、工事工期は様々な条件があるなか約6年と厳しく、平成26年1月着工し、平成31年末完成を目指して事業が進められています。

現在、当社および他社が担当している現場に共通するのは、気象・海象条件が厳しいことです。晩春から秋は台風シーズン、晩秋から冬は冬期波浪が高まり、なかなか思うように進捗しません。今年(2016年)は珍しく現在まで台風もなく工事の出来高は進みましたが、昨年、一昨年は5月からの台風の接近で台風警戒の作業に終始していました。

また、資機材の調達・調整も難しい現場で、方塊や消波ブロックなどの製作ヤードも那覇空港の近くにはなく、空港とは反対側の中城湾港で製作し海上輸送をしていますが、時間が掛かり、製作ヤードにも担当者を配置しなければなりません。また、石材も約38海里はなれた場所から地元船舶で調達しています。

この滑走路増設工事を進めるうえで重要な対策の1つに環境への配慮があります。きれいな海や希少なサンゴ類を保護し、漁業関係者の漁場に配慮することです。
【 主な環境保全対策 】

●連絡誘導路により分断させる海域の海水交換を促し、海域生物の分散・回帰ルートを確保するため、連絡誘 導路に通水部(ボックスカルバート)を設ける。

●新たに出現する護岸がサンゴ類や底生動物の着生基盤となるよう、護岸の一部に凹凸加工した消波ブロックや自然石を用いた傾斜式護岸を整備する。

●代償措置として、生息場所が消失すると予測されたサンゴ類の一部については、事業者の実行可能な範囲内で移植・移築を行う。また、施工時には汚濁防止膜の設置、基礎マウンドや傾斜式護岸に使用する自然石は、積み出しの時と海への投入時の2回、石に付着する土などを水で洗い流し、海の濁りの低減を図る。
若築建設は、那覇空港滑走路増設事業の中で多くの重要な工事を担当し、総勢20名が一丸となって空港整備事業に就いています。そして当社の技術力をこの大きなプロジェクトでもアピールします。
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護岸N工区築造工事
発注者内閣府沖縄総合事務局
建設場所沖縄県那覇市
工期2014年4月~2017年3月
概要空港北側の護岸工事
早田総括所長
早田総括所長

空港北側の護岸工事は
自然条件と環境対策が鍵

現在、工事全体の進捗(取材時)は53%ぐらいで、ケーソン据付は残り4函です。ケーソン据付が完了しても残り40%で、まだ仕事はたくさんあります。冬にかかる時期に、石を入れて、上部工を行い、さらに上部工に消波を施し、数千個の被覆ブロックも据えなければなりません。しかもこの現場は外洋に面している海上条件が厳しいところ、本来、防波堤が必要なところに護岸を造っているようなものです。台風のときはどこからでも波が入り、北風の冬場はなかなか仕事になりません。リーフがある南側は北風でも作業はできますが、北側は白波が立つほど風がきついのです。

またケーソン据付も他工区の15函に比べ29函と多く、工区も一番深いところから浅いところまでと条件に幅があります。ケーソンの形も経済性を考慮して形が様々で、施工側からすると扱いが変わり苦労します。

ケーソンを全て据付後は、潮の通り道になる場所の締め切り作業があるのでこれも大変です。特に台風には最大の注意が必要で、ケーソン据付の最中や被覆が途中の状態や閉め切る前に台風が来たら、ケーソンが波にとられます。他の工区でも何度もありましたので、ここでの閉め切りは一気に仕上げなければなりません。

他にも、ケーソンを積み出す大型起重機のアンカーを航路には絶対出さないように、船の運航管理システムを使用して厳守し、また、本来ケーソンの据付けには、上に作業員が乗ってワイヤーで吊り上げますが、上には誰も乗せない無人化も徹底します。そしてここは海がきれいところ、確実な環境対策が要求されます。この安全面と環境面2つの対策が重要となります。難所の『N工区』とも言われますが、なんくるないさーの『N精神』で工事完成を目指していきます。
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濁り対策のため、ガット船で石を洗う
護岸E工区築造工事
発注者内閣府沖縄総合事務局
建設場所沖縄県那覇市
工期2015年5月〜 2016年6月
概要護岸築造工事
松崎所長
松崎所長

自然石と被覆ブロックで対応する
「環境保全措置対応対策空港地」

E工区築造工事では、海の深さが大きく影響しました。船での捨石投入ができず、ダンプ車で陸上捲出しで対応し、また捨石の需要と供給のバランスの悪さを改善するため、供給場所を分散して対応しました。工事は汚濁防止膜の管理と撤去・移設、全長600m弱の護岸築造です。

捨石に使用した黒石は本部半島にある古生代の石灰岩、白石は本島中南部にある新生代の琉球石灰岩で、サンゴから作られる石灰質の殻や骨格が海底に堆積し固結したものです。水深-4mくらいのところは、フェリーバージ船を護岸に垂直に着け、積んだ石を直接投入しましたが、水深の浅いところではダンプトラックに捨石を積み込み、運搬し陸上捲出しを行いました。

護岸の成形は捨石均しを行わず、陸上で行うようにバックホウを使用し、水深-4mの部分はロングアームバックホウを、一部届かないところのみ水中バックホウで成形しました。

この現場は「環境保全措置対応対策空港地」として、自然石だけを積んで環境保全に対応した空港にするため、環境影響評価表が適応されています。石だけでつくる堤は一見不安そうですが、石が崩れないように法面(斜面)は振動バケツで叩いて固めます。工事箇所の一部では2トンの被覆ブロックを石の法面上に948個据え付けますが、これは崩れ防止ではなく、高い波による洗掘防止のためです。内側に波が入ってこない他の工区は、全く被覆が必要ない自然石設置だけの護岸箇所で、サンゴなどの環境保護を考えたものです。
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仮設堤築造工事
発注者内閣府沖縄総合事務局
建設場所沖縄県那覇市
工期2015年7月〜 2016年10月
概要仮設提築造工事
椋林統括所長
椋林統括所長

戦争の負の遺産と
対峙しながらの作業

那覇空港滑走路増設における仮設堤の消波工の施工で、20tから64tの消波ブロック、全7,399個を中城湾港から海上輸送し、那覇港内に据え付けしています。

当初、滑走路計画地の南西の端に据付する計画でしたが、計画が変更となり、受注直後の2015年7月より変更協議を行っていました。最終協議が終了し、現在の那覇港内の施工場所で作業を開始したのは2016年2月からでした。作業開始までの8ヵ月はすごく気を揉みました。作業を始めてからは、順調に進んでいます。

2016年1月からの約1ヵ月、現在の施工場所で潜水探査を行った際に、大量(約50個)の不発弾が発見されました。すぐ海上自衛隊に連絡し、事前に不発弾処理をしていただくこともありましたが、順調です。

また、この工事だけではありませんが、那覇空港滑走路増設事業に関する工事については、安全協議会を発足し、全作業船の運行管理を一括して行っています。多くの作業船や貨物コンテナ船、クルーズ船などが行き交うところですので、1工事での管理ではなく、事業全体で管理することは大変良いことだと思います。
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ボックスカルバート工事
発注者内閣府沖縄総合事務局
建設場所沖縄県那覇市
工期2016年3月〜 2016年10月
概要那覇空港の滑走路と新設する滑走路を結ぶ誘導路
太田所長
太田所長

飛行機の重量、
沖縄の気候に対応した施工

現在、那覇空港で供用している滑走路と新設する滑走路を結ぶ誘導路に、通水部として設置するためのボックスカルバートを製作しています。通水部を設けなければ南北で海が隔てられ、環境へ悪影響を及ぼす可能性があるためです。長さ50mのボックスカルバート2函と長さ40mのボックスカルバート1函を那覇港内にあるFD(フローティングドック)で製作しています。工期が非常に厳しい現場ですが、昨年度、同様の工事を担当した施工会社にヒヤリングし、良い点などを見習い本工事に反映しました。

現在製作しているボックスカルバートは、将来的に大きな飛行機がその上を通っても十分にその重量に耐え得る構造になっており、鉄筋は太い物で直径35mm、配筋の間隔も密になっています。3つのボックスカルバートは、それぞれ配置される場所が決まっており、誘導路の中央部と端部での配置場所で鉄筋量が異なる設計になっています。

またボックスカルバートはコンクリート構造物なので品質には特に気を付け、暑い沖縄でのコンクリート打設では、コンクリートの温度上昇によるひび割れを防止するためパイプクーリングを提案し実施しました。さらにコンクリートの表面の耐久性向上を目的に透水性型枠や、コンクリートの湿潤養生のための保水養生テープも使用提案し施工しました。工期が少ないなかでも手間をかけ、品質向上のため努力を惜しみませんでした。
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1工区南側埋立工事
発注者内閣府沖縄総合事務局
建設場所沖縄県那覇市
工期2016年12月〜 2018年2月
概要埋立工事
太田所長
太田所長

濁り対策の埋立工事
工期と砂の会場搬入に奮闘

イメージ画像 那覇空港滑走路増設事業は、現在の那覇空港の西側の沖合を埋め立て、第2滑走路を増設するプロジェクトです。1~6の工区に分かれ一番南側の1工区で、若築は埋立工事を担当しています。

外周の護岸の裏込めの部分に、フィルター層を施工し、その後、南側を80mくらい埋め立てます。砂の量は約37万㎥、一部防砂シートの敷設が約4,700㎡、それに合わせて大型土のう約4,000個を設置します。砂を運ぶ船がどれだけ入るかが、工事の進捗を左右する現場です。砂がコンスタントに入るためには天気が良くなければならず、いままでの稼働実績では1ヶ月のうち17日くらいは砂が入っています。

イメージ画像 実は、最初の防砂シートの敷設段階で少し遅れが生じました。県の都合で少し中断もあり、他の工区が終わらないとできないことがあり、その待機で時間が取られました。

防砂シートは、埋め立てる前に石でできた護岸の周りに敷くもので、土砂の吸出し防止になります(埋め立て材の砂の吸出しによる流出防止。吸出しが起こると埋め立て部に陥没などが発生することがあるため)。このシート敷設後に初めて砂を入れて埋め立てます。防砂シートには石の荒均し作業を省略できる高伸度のものが決められており、それを使います。この防砂シートの敷設は、他工区ではすでに終わっていましたが、1工区の西側の一部にまだ施工されていないところがあり、それが今回の工事にありました。そこに防砂シートを敷設してから砂を入れて埋め立てます。

現段階の施工状況は、護岸内側に、10m幅で砂を入れてフィルター層を造成するのですが、その初めの段階です。周囲を囲んだ後に岩ズリを入れます。これは今回の請負工事には入っておらず、別の工事となります。ただ埋め立てれば良いのではなく、砂を入れたり、岩ズリを入れたりするところもあります。これは飛行機の離着陸場所の関係にもよるので、機体の重さのかかる場所によって岩ズリを入れるのか、砂を入れるのかが変わってくると思います。いわゆる埋め立て材のゾーニングになるわけです。滑走路や誘導路の直下には確かな路床をつくらなければならないので、岩ズリを入れ、その他は海砂や残土でやるなど、設計段階で決まっていると思います。1工区の一番端であるこの現場は、そんなに発着の影響を受けるとは考えていません。

イメージ画像 埋め立ての砂は糸満からきていますが、いくつかの採取箇所があり、その時の船の手配によって変わります。糸満からの船も最初は2往復する予定でしたが、なかなか難しいです。「今日は2回、明日は1回」というような状態で、2回やるのであれば、前日の夜には砂を積み、朝にすぐ出航しなければなりません。いまは朝に積んだ砂が昼前に到着しています。結局1回の搬入となり、2回は難しいです。2日で3往復が精一杯です。砂は全部海砂で、この砂の供給も他の工区と分け合っていますが、当社の優先順位は2番目ぐらいです。先に工事が終わる工区がありますので、その分をもらえるようになれば、割り当てられる砂の量が増えます。また、運搬船も大きくします。大きい船だと1回あたり3,500m³の砂が運搬できます。いまの船は2,000m³で1回だけですが、そのうち3,500m³積める船がくる予定にしています。

この埋立工事の難しさは、埋め立て手順をどうするかにあります。基本的には周りを囲み、最後に埋め立ての大きいところをやろうと予定していました。しかし、だんだん閉めていくと潮の出口がなくなり、どうしても他のところに流れが来て、悪さをします。先日、一部シートが剥がれました。この対応策に別手段はないか、深くて弱いところを先に、最後にリスクの少ない浅いほうを埋め立てようかと、考えたりします。悩ましいところです。
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この難題を計算で対処できないかと考え、その計算のために設計部から港内と港外の水位差を時間毎に測ったものを求められています。その算出結果がうまく反映されればと思っています。絶対的なデータとなる保証はありませんが、その結果を参考に、こういう時はこうなるというデータが出れば面白いかなと思っています。そのための必要な条件や、役所から設計当時の考えや計算方法があれば仕入れてほしい、と言っています。

また、周りを囲んで埋め立てる方法は、濁りを海に出さない手段として用いています。岩ズリなんかを入れると濁りが発生するので、砂でまず膜(フィルター層での濾過効果)をつくってから岩ズリなどを入れるのですが、砂も吸出されますから、それを防止するためにシートを敷いてくれと言われました。海洋汚染に対する、より確かな対策ですね。

大きな技術提案を考える
技術提案はいろいろ行い、いま10トン級のダンプで砂を運んでいますが、広いところを埋める際には40トン級の大型ダンプを使って効率化を図る提案をしました。他県から大型ダンプ5台を船で運んで入れるつもりです。また、重機周りの接触が危ないので、テレビカメラをつけてモニターで接触防止する技術提案も考えています。他にもフローターを組み合わせるユニフロートという台船があり、それを組み立てて中に浮かべ、その上にバックホウを載せて、中からも砂を入れようかと思っています。提案した内のいくつかはすでに実施されています。

イメージ画像 大型ダンプは、2工区の桟橋に船をつけて、そこから降ろしてくる予定です。普通の道路では制限があり、他の機械の搬入と合わせて一緒に船で運びます。空港の現場はどこでもそうだと思いますが、飛行機が飛んでいる横で作業するわけですから、いろいろ制約はあります。

埋立工事と、一見すれば簡単な工事と思われそうですが、この工事は違います。単純に埋め立てだからダンプで砂を運んできてひっくり返してと、何かすぐやれそうで簡単だと言われそうですけれど、ここはいろいろ違う制約もたくさんもありますし、船を1回入れるにしても、他工区との調整もあります。思った以上に大変な現場だと言えます。
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PROJECTプロジェクト紹介

若築建築が請け負った、土木・建築プロジェクトをご紹介します。海上・陸上、国内・海外を問わず、
様々なプロジェクト現場の声から、若築建設の業務の空気を感じ取ってください。
掲載情報は2017年4月現在のものです。